ピンキー(荒井宏之)による「イノベーションの種」をお送りするニュースレター
第4号 2025/06/9
📬今週の目次
今週のコラム
時事&トレンド オピニオン
注目のスタートアップ
書評
動画コンテンツ評
エンタメレビュー
グルメ情報
AIと壁打ちリサーチしてみた
未来妄想新聞
Pinky’s Slide:ピックアップ
心に響いた名言
ChatGPTに聞いた先週のピンキー
セミナースケジュール
Pinky’s Message:更新情報
新規事業Q&Aコラム:更新情報
マインドセットコラム:更新情報
YouTube更新情報
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https://theseeds81.substack.com/archive
✏️今週のコラム
先日、Snack IntraStar(新規事業担当者の交流会)にて、「AI 2027」という話題の論文をもとに、生成AIが導く人類の未来について議論が白熱した。
その時に話しながら整理したボクの考えについて、コラムにまとめてみようと思う。
早ければ2027年に、AIはシンギュラリティを超える。
長らく私たちは、「DXの波が来る」「AIで業務効率化だ」と言い続けてきましたが、2027年前後に到来するであろう次世代の生成AIは、これまでの延長線では語れない質的転換を引き起こすと言います。
自らコードを書き換え、研究テーマを発見し、学習コストを劇的に下げながら自己強化するエージェント群が市場へ雪崩れ込む。
これは単なる自動化でも人間拡張でもない。知的生産の中心が人間からAIへとシフトするターニングポイントとなります。
AI全盛期を目前に、ボクらは何で差別化するのか
AIがホワイトカラーの定型業務を飲み込み、さらに高度専門職の上位3割を脅かす未来が、時々刻々と確度を増しています。
今多くの経営者が慌てて「社員には付加価値の高い仕事を」「クリエイティビティを伸ばせ」と口にし始めています。そんな経営者ですら「感度が高い」のが日本の危機的な状況を示しています。
ここで求められる"付加価値"の定義は、AIの進化とともに書き換えられていっています。例えば、半年前には「プロンプト・エンジニアリング」が重要な仕事になると言われていましたが、今やもう適当な質問を投げかけてもAI自らがプロンプト・エンジニアリングをしてくれるので不要になっています。
AIの進化に伴って、付加価値のコモディティ化のスピードが、人間の教育スピードを追い抜いてしまう残酷な現実を直視しなければなりません。
ボクらはどこで勝負すべきなのか。ボクは現時点では「問いを設定する力」と「リアルな一次体験」にあると考えます。
AIでは生成できない「未整理で、五感で感じる現場の熱量」と、「そこから感じる直感から設定する非合理の違和感が伴う問いの設定」。この2つを統合する「アート思考」は、間違いなくしばらく重要になります。
ポスト労働経済で輝くのは“思想”と“コミュニティ”
AIがホワイトカラーの定型業務を飲みこむということは、労働が生計の条件ではなくなるということでもある。将来的にはベーシックインカムや共産主義が世界の当たり前になっていくのかもしれない。
では、もし労働が生計の条件でなくなったとき、人は何によって動機づけられるのかについて思いを馳せてみたい。そこで重要になるのは「思想を持ち、その思想を共有する仲間を持つこと」なのではないだろうか。
つまり、AIが情報の大海を生成し続ける世界では、“誰とどんな世界観を共有するか”が資本になるということだ。思想を持たぬ企業や個人は、AIが吐き出す山のようなテンプレートに埋もれ、不可視化される。
コミュニティを核に、自社のビジョンで共感を生み出し、共鳴によって共創のハブを築けるかどうかが、生存確率を大きく分けることになっていくだろう。
生成AIは“文化のブラックライト”となる──本物だけが浮かび上がる
AIは芸術や文章も量産します。平凡なコピーは一瞬で陳腐化し、“それっぽい作品”は市場から価値を剥ぎ取られていく。
まさに今イラストレーターの価値がなくなっていく現象がすでに起こっていることからも、その未来は確実に訪れる。
では人間のクリエイターは失業するのか。ボクはその逆にいくと思う。AIによるコンテンツの大量生成という闇夜にこそ、本物の光が際立つ。
たとえば、現場の匂いが染みついた一本のルポ、個人の傷をさらけ出す詩、リアルな顧客と共に走ったサービスの物語──フィジカルと感情の手触りを宿すアウトプットは、AIが模倣できない希少資産だ。
企業は、戦後の大量生産大量消費の呪縛から逃れ、AI時代のブランド価値への返還のために、自社の裏側に眠る「温度」をいかに表に出していくかどうかを考えていくことが求められる。
我々が今が取るべき三つのアクション
1)一次情報の人になる
五感で拾った現場の声、失敗の痛み、顧客の表情――検索に出ない情報を自前で掘り起こせ。またそれをいかにテキストデータとして溜め込み、自分独自のCentral Brainを構築するかが、人よりも一歩も二歩も進んでAIを活用する鍵となる。
2)AIと共振する問いを立てる
「何を効率化するか」ではなく「何をまだ誰も解いていないか」。AIを使い倒す前提で、問題定義力をアップデートしていかなければならない。情報収集に時間をかけるのではなく、思考に時間をかけることが必要不可欠だ。
3)思想を共有できる仲間を巻き込む
孤独なハッカーではなく、言語化されたビジョンで仲間を焚きつけるリーダーへ。バーティカルでパーソナルなスモール・コミュニティこそが次世代のOSとなっていく。
生成AIが照らすのは、人間の“熱量”
生成AIの普及は、私たちから作業を奪うのではなく、“心からやりたいことだけが残る世界”へと、強制的に移行させられる。
そこで問われるのは、ボクら自身の熱量になる。AIがどれだけ賢くなっても、想いを燃料に未来を編集する主体は、ボクら自身であり得る。
2027年のカーブを曲がる前に、どんな問いを掲げ、どんな仲間と走るのか──その決断を今すぐに行い、今すぐに行動を起こすことこそが、AI時代を面白く生き抜く最大のレバレッジとなる。
情熱をこめて、
ピンキー
📰時事&トレンド オピニオン
過去のオピニオン▶︎NewsPicks
アップル、AI活用で「iPhone」バッテリー持続時間を改善へ-関係者
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-05-12/SW5V8ADWX2PS00
概要
Appleは2025年9月にリリース予定の「iOS 19」で、AIを活用した新バッテリー管理モードを導入予定。ユーザーの使用傾向を分析し、自動で消費電力を最適化。特に薄型化が進む次世代iPhoneでのバッテリー駆動時間短縮への対策として、AIによる電力効率改善に期待が寄せられている。
オピニオン
これは「AIの進化がハードウェアの進化を加速する」ことを象徴するニュースだ。これまでハードウェアは、より速く、より小さく、より美しくを追求してきた。だが薄くなるほど、バッテリーという物理的制約が限界を突きつけてくる。かつては素材や構造の工夫で延命してきたこのジレンマに、いよいよAIという“知性”で突破口が開かれようとしている。
AIは、単にアプリの中だけにいるのではない。ユーザーの行動パターン、習慣、ライフスタイルを深く理解し、静かに裏側でデバイスの「意思決定」を最適化していく。それはまるで、使い手に寄り添う“第二の脳”だ。人間が気付かぬうちに余計な電力消費を抑え、必要な瞬間に力を注ぐ。ハードウェアの進化を、知能が内側から支える時代が始まった。
そしてここにこそ、プロダクト開発の未来がある。限界まで洗練された物理構造に、賢く柔軟なソフトウェアが宿る。その組み合わせが、新しい体験を可能にする。つまり、「機能 × 賢さ」の掛け算こそが、今後の差別化の主戦場になる。
企業はこの変化に備えなければならない。もう“ものづくり”だけでは足りない。顧客と日々対話し、学習し、成長する製品体験が求められている。Appleが提示するのは、単なる機能改善ではなく、プロダクトの構想自体を再定義する挑戦だ。AIがプロダクトデザインを変える。この動きに乗れなければ、次の世代の製品では“使われない”側に回ることになる。
Sakana AI、生物の脳に“より近い”仕組みのAIモデル「CTM」発表 ニューロンが活動する「タイミング」を活用
https://www.itmedia.co.jp/aiplus/articles/2505/12/news128.html
概要
Sakana AIは、生物の脳により近いAIモデル「CTM(Continuous Thought Machine)」を発表。ニューロンの発火タイミングを学習に取り入れ、情報の流れや思考プロセスを時間軸で再構成。複数ステップによる非言語的な推論や、人間にとって解釈しやすい思考過程の可視化を実現し、汎用性の高いタスク解決能力を示した。
オピニオン
AIは「考えるふり」から「本当に考える」段階に進もうとしている。
Sakana AIが発表したCTMは、これまでのAIに欠けていた“思考のリズム”を取り戻そうとする試みだ。人間の脳が「いつ」情報を処理するかに注目し、判断や行動に“時間軸”を持ち込んだこのアプローチは、単なる技術ではなく、「知性の構造」そのものへの問いかけに等しい。
そしてこの文脈において、日本企業の多くは圧倒的に準備が足りていない。演算性能や電力効率のスペック競争に囚われすぎて、「AIが何を可能にするか」という本質的な問いが抜け落ちている。問われているのは、何を作るかではなく、何を信じて設計するかだ。
AIが知性を獲得していく未来において、設計思想そのものが競争優位になる。その意味で、Sakana AIのCTMは、性能ではなく“思想”で勝負している。これこそ、イノベーションの本質だ。今、日本に必要なのは、部品を組み立てる力よりも、「問いを設計する力」だ。思考を宿すアーキテクチャを描けなければ、次の時代の設計図には、名前すら載れないだろう。
ゼンショーHD、牛丼と寿司で「1兆円帝国」築く
https://newspicks.com/news/14197569/body/
概要
ゼンショーホールディングスが2025年3月期に売上高1兆1366億円を記録し、日本の外食産業で初の「1兆円企業」となった。牛丼「すき家」や買収した「ロッテリア」「スノーフォックス」などが成長を牽引。今後は海外展開とM&Aを加速し、2028年までに売上1.5兆円を目指す。一方で、異物混入やコメ価格高騰の影響で短期的な減益も見込まれている。
オピニオン
“世界一の外食企業”を目指す——その野心は、賞賛に値する。だが、ゼンショーの1兆円突破が意味するのは「数の膨張」ではない。「統合された思想の拡張」でなければならない。
日本発の外食ブランドが、マクドナルドやスタバに並ぶ「文化」となりうるか。これは味や価格の勝負ではない。世界の多様な食卓と価値観に、どれだけ“思想”を届けられるかの勝負だ。
そして、ここに日本企業の“弱点”がある。多くは国内の商習慣や美意識の延長で海外展開を図るが、現地の生活に根づいた文脈化ができない。つまり、「モノの輸出」ではなく「意味の輸出」ができていない。
ゼンショーが挑むべきは、単なるチェーン展開ではなく、“食文化の編集者”になることだ。なぜその価格なのか、なぜその味付けなのか、なぜその空間演出なのか。全てに明確な哲学と文脈を宿すブランドだけが、世界で愛される存在になれる。これはまさに「食のグランドデザイン」であり、言語・習慣・宗教すら横断するイノベーションが求められる。
目指すべきは、トリレンマの統合。すなわち「美味しさ」「安さ」「哲学」の同居だ。その覚悟がなければ、数字の拡張は虚構にすぎない。だが、その覚悟があるなら、日本の外食が世界の食卓を変える未来も、決して夢ではない。
パナソニックは日本と丸かぶり 生産性低下で30年間成長できていないワケ
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2505/14/news049.html
概要
パナソニックが黒字にもかかわらず1万人規模のリストラに踏み切った。狙いは「社員1人当たりの生産性」向上のための構造改革。同社は30年間成長できず、巨額投資も一時的効果に終わってきた。高年齢化と現状維持志向が根本課題とされ、日本全体の「失われた30年」と重なる。政府の補助金政策も現状維持を助長し、中小企業を中心に成長の停滞が続く中、生産性低下の本質的課題に迫る構造問題が浮き彫りとなっている。
オピニオン
パナソニックの構造改革は、単なる人員整理ではない。問い直すべきは「何に賭けるか」だ。日本も企業も、この30年“何も失わなかった”のではない。“変われる機会”を手放し続けてきただけだ。
現状維持は約束された沈没だ。生産性の本質は「付加価値を創造する行動」であり、それには恐れずチャレンジする文化が不可欠。だが、年功序列や長期雇用が“安心”と“惰性”を同居させた。この構造の中では、イノベーションは育たない。
個人が悪いのではない。制度設計とインセンティブの問題だ。「しがみつく50代」ではなく、「進みたくても進めない構造」が日本の成長を止めている。生産性は努力ではなく“設計”の問題である。
変わるべきは個人のマインドではなく、挑戦する人が報われる「ゲームのルール」そのものだ。企業も国も、まずその設計を疑うところから始めるべきだ。
「これが日本の鉄道技術か…」海外も注目するJR東日本の「信号機不要」の制御システムとは
https://diamond.jp/articles/-/364487
概要
JR東日本は、信号機や軌道回路を不要とする無線式列車制御システム「ATACS」の普及を進めており、2028年以降に山手線・京浜東北線への導入を予定。既に仙石線や埼京線で実用化されており、保守性・故障耐性・制御精度の高さが評価されている。純国産システムとして国内外から注目を集め、将来的な海外展開も視野に入れている。
オピニオン
この技術は、日本人の「偏執狂的な正確性」と「安全性への執着」から生まれた芸術品だ。140年間の常識だった「信号機」を不要にするというのは、単なる技術革新ではない。前提を壊す勇気と、それを支える緻密な技術の積み重ねがなければ実現しなかった。
ATACSは、世界で普及するCBTCとは似て非なるものだ。多くの国が“安全のために”バックアップとして軌道回路を残す中、日本は「最初からそれなしで安全を成立させる」ことを目指した。その姿勢は極めて日本的であり、同時に世界の鉄道インフラ思想に一石を投じる。
問題はここからだ。この技術を「世界基準」として押し広げられるかどうか。発明する力と、広める力は別物だ。世界の鉄道網を変える可能性を秘めたATACSを、ガラパゴスにせずに“世界の文法”に育て上げられるか。次に問われるのは、日本の“翻訳力”と“商流設計力”である。
AIの「幻覚」はかつてないほど悪化している。幻覚率ランキング1位のAIモデルは?
https://www.techno-edge.net/article/2025/05/13/4352.html
概要
生成AIの「幻覚(ハルシネーション)」が深刻化している。OpenAIの最新モデルo4-miniでは幻覚率が48%に達し、前世代の3倍に。特にDeepSeek-R1では「良性の幻覚」が多く、原文にないが常識的な内容を補完する傾向が見られる。これに対処するため、Vectara社は幻覚補正ツールVHCを発表。生成文とソースを比較し、事実と異なる点の修正提案を行う。
オピニオン
生成AIの進化は、精度と同時に“嘘の巧妙化”も伴う。幻覚率の上昇はバグではない。むしろ、文脈を「賢く」埋めようとするがゆえの“過剰な親切心”が裏目に出ている。
だがここで問うべきは、技術の是非ではない。「人間がそれをどう扱うか」だ。良性の幻覚は、編集的思考の延長線とも言える。だからこそ、使い手側が“何を事実とするか”という情報設計の思想を持たねばならない。
AIの精度はいつか上がる。しかし、信頼とは設計の問題だ。私たちは「なぜ信じるか」に対して、常に自覚的である必要がある。技術への盲信ではなく、共進化するリテラシーが今こそ問われている。
エヌビディアも手がける「フィジカルAI」の現在地。工場・家庭向け人型ロボット、実現間近の自動運転
https://toyokeizai.net/articles/-/8
概要
エヌビディアやテスラなどが注力する「フィジカルAI」が注目を集めている。人型ロボットや自動運転といった物理空間で動作するAIが、家庭や工場、交通の現場に実装され始めており、2035年には5.5兆円市場に成長する見込み。NEO GammaやFigure 02など各社のロボットが試験導入され、ウェイモのロボタクシーも普及中。日本勢はハード重視で出遅れたが、AIが進化の主役を握る新時代が到来している。
オピニオン
「人型ロボットが日常に溶け込む時代」が、いよいよ現実になろうとしている。だが、この潮流をリードしているのは米国や中国であり、かつて“ロボット大国”と呼ばれた日本の姿はそこにない。
なぜか?理由は明確だ。AIの進化を“ハードの付属機能”と捉えた国と、“知能の中心”と捉えた国との差だ。制御精度や耐久性といった日本の強みは、今や「前提条件」に過ぎない。今求められているのは、「環境を認識し、判断し、適応する」という知性の再設計だ。
フィジカルAIは、単なるロボットではない。「身体性を持った知能」という新たな生命体だ。それは家事も運転も“人間らしく”こなすだけでなく、人間と共感し、関係を築く存在になる。
この時代に必要なのは、“部品としての技術”ではなく、“世界観としての設計思想”だ。私たちは「何をどう動かすか」ではなく、「何のために、どう共に生きるか」を問う段階に来ている。ロボット工学は、技術ではなく倫理と創造の時代へ突入したのだ。
「猫ロボットで効率化だ!→採用も増えちゃいました」 ガストやしゃぶ葉で導入の配膳ロボット。運営会社も驚いた“意外な効果”を聞いた
https://toyokeizai.net/articles/-/877785
概要
すかいらーくグループは猫型配膳ロボット「ベラボット」を約3000台導入し、省人化にとどまらない多様な効果を実現。スタッフの身体負担軽減や、シニア・障害者・外国人の雇用拡大、教育効率の向上をもたらした。ロボットは感情表現や音声でスタッフと協働し、「同僚」として親しまれている。人とロボットの共存により、単なる効率化ではなく「人間らしい働き方」の実現を促進する好例として注目されている。
オピニオン
猫ロボットは、省人化ではなく“人間性の解放”を生んだ。
ロボット導入がもたらしたのは、単なる業務効率ではない。体力勝負の配膳から人間を解放し、シニアも障害者も外国人も「働ける場」を得た。その結果、店には“人の温度”が戻ってきた。効率化の裏に、人が生き生きと働ける“ゆとり”が生まれたのだ。
これは「ロボットが人間を代替する」のではなく、「ロボットが人間の価値を引き出す」設計の勝利である。テクノロジーの本質は、人を減らすことではなく、“人にしかできない価値”に集中できる環境をつくることにある。
ロボットの活用が“効率”ではなく“多様性と尊厳”に火を灯すとき、テクノロジーはようやく「未来を拓くパートナー」になる。省人化の未来ではなく、共創の未来へ。それが、グランドデザインの思想である。
なぜ“怪しい”のに売れている? リカバリーウェアという不思議なヒット商品
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2505/21/news060.html
概要
「着るだけで疲労回復」などを謳うリカバリーウェアが高齢者を中心に大ヒットしている。医学的エビデンスは限定的だが、遠赤外線やプラセボ効果、SNS体験談、テレビの影響が購買を後押ししている。高齢化が進む日本では、こうした“怪しくも害の少ない”商品がシニアの生活に自然と入り込みつつある。
オピニオン
リカバリーウェアは、「科学」ではなく「信じたい未来」をまとわせる装置だ。プラセボであろうと、着た本人が「昨日より今日がラクだ」と思えたなら、その瞬間に“効果”は生まれている。これは物理的効能を超えた“感情の効能”を設計するプロダクトといえる。遠赤外線の技術ではなく、「語りたくなる物語」こそが最大のイノベーションになっているのだ。しかもそれが「副作用もなく、装着するだけ」で機能する。これは現代の“安全な魔法”ということもできる。
日本は高齢化という巨大市場を抱える一方で、慢性的な不安と不眠と痛みに囲まれた国でもある。そこに“ちょっと怪しいけどワクワクする”商品が入り込む余地は、想像以上に大きい。人間は、理屈よりも「自分で選びたい」「納得したい」という体験を信じる。その意味で、プラセボも含めて「体験」を売るというのは、機能的価値を超えた“情緒的UX”の提供である。
だがその一方で、ヘルスケア領域において「科学的根拠のない効能」を謳うことは、詐欺と紙一重でもある。効果を過大に演出しすぎれば、高齢者を巧みに騙す構造にもなり得る。実際、過去に類似商品が行政指導や摘発を受けた例も多い。「医療機器」の認定も、実態は届出ベースで、効能が科学的に証明されたわけではないこともある。
イノベーションと詐欺の境界線は、“意図”と“設計”にある。リカバリーウェアは、そのギリギリのラインを絶妙に突いているのかもしれない。エビデンスが曖昧でも、「安全性が高く、希望を提供できる」設計があれば、社会的コストを下げる可能性もある。そこに本質的な価値があるのなら、これは“情緒の医療”であり、“言葉の薬”とも言えなくもない。
しかし、そこに「倫理」と「再現性」がどこまで担保されているのだろうか。ナラティブで売ることは悪ではない。だが、それが“構造的に脆弱な人を食い物にする仕組み”になってはいけない。希望は「見せ方」で与えられる。だが、誠実さは「設計思想」に宿る。“信じたい”と思わせるプロダクトを、誰が、何のために、どこまで許容するのか。リカバリーウェアは、「老いる国・日本」に突きつけられた倫理の問いでもある。
どこの会社も"パーパス"ばかり… 多くの日本企業が陥っている「パナソニック病」の正体
https://toyokeizai.net/articles/-/878453
概要
パナソニックHDが発表した1万人削減の改革に対し、パーパス経営の形骸化が批判されている。社員の共感なき表現、曖昧なビジョン、AI活用による思考力や表現力の劣化──そうした構造的課題は同社に限らず多くの日本企業に共通する。パーパスが“念仏”と化し、経営が形式知化されすぎている現状が問われている。
オピニオン
魂のこもっていないパーパスほど、現場の徒労感を増幅させるものはない。「意味のある未来を描け」と言いながら、言葉だけが先走る。この乖離こそが“パナソニック病”の正体だろう。
経営におけるパーパスは、ただの"スローガン"にしてはいけない。パーパスが日々の行動パターンに落とし込まれ、ビジョンに対する感情の血流が通っていて初めて、組織は動き出す。だが実際には、多くの日本企業が「語れないパーパス」「実行されないビジョン」を掲げるだけで、従業員は“社歌”のように唱和させられているだけだ。
一方で、AIが高度化する時代において「人間の表現力」や「情緒による共感力」は、企業の競争力そのものになる。分析はAIでいい。だが、鼓動を伝えるのは人間でなければならない。“正確なプレゼン”よりも、“伝わる物語”のほうが、現場を動かす。
にもかかわらず、日本の組織においては、「ストーリーテリング力の欠如」が加速度的に進む。期初の戦略発表会で、手元の資料を読み上げるだけの経営層に、誰がついていこうと思うのだろうか。今問われているのは「言葉に思想を宿せるか」だ。
AI時代のリーダーは、パーパスを語るのではなく、“生き方として体現する存在”でなければならない。データや情報は、AIの方が優れているのだから、「人より物を知っている」ことがリーダーの資質にはなり得ない。まず最初に「言葉の熱量」が問われる。「理論(ロジック)」ではなく「物語(ストーリー)」で、人は動くのだから。
🚀注目のスタートアップ
過去のPick up▶︎Note Magazine
先進核融合スタートアップ「LINEAイノベーション」
https://linea-innovations.com/
概要
LINEAイノベーションは、「Fusion Energy to the Future Generation」をミッションに掲げ、「中性子を出さず安全でシンプルな革新的核融合炉の実現」を目指しています。
燃料には、軽水素とホウ素11(p-11B)を用い、これにより中性子を出さない先進燃料核融合(p-11B核融合)の研究開発に取組んでいます。これにより、従来型D-T核融合炉に伴う三重水素の取り扱いや、中性子による放射化・廃棄物の発生と言った問題を根本的に回避し、高い安全性と持続可能性を兼ね備えた次世代エネルギーを実現できます。
技術的には、独自開発するFRC(Field-Reversed Configuration:磁場反転配位)による高密度ターゲットプラズマを、ミラー磁場に捕捉された高エネルギービームイオンと反応させる非熱的なアプローチにより、効率的な先進燃料核融合を目指しています。日本大学、筑波大学等との共同研究を通じ、革新的な先進燃料核融合技術の実用化に取組んでいます。
オピニオン
核融合と聞くと、「実用化まであと30年」という皮肉がつきまとう。だがLINEAイノベーションは、この空気を根底から変えようとしている。彼らが挑むのは、“中性子を出さない”p-11B核融合──つまり、放射性廃棄物ゼロを実現する、究極にクリーンなエネルギーだ。
「未来の夢」に見える技術を、あくまで“技術と社会の接合点”で設計していること。大学との共同研究で足場を固め、重厚長大ではなく“軽やかなスケール設計”で核融合を社会に届けようとしている。イノベーションとは、技術を信じる勇気ではなく「どこまで現実に寄り添えるか」という構造戦である。
核融合ベンチャーが世界的に増える中で、**「放射化ゼロ」×「小型炉」×「現場志向」**というトライアングルは、日本から世界を揺らす可能性を秘めている。夢物語の向こう側へ、彼らが見ているのは「子どもたちが安心してエネルギーを使える社会」だ。そのビジョンに技術より先に“信じたくなる未来”を描いている。
行動科学 × AI「Godot」
概要
ヒトの行動原理を解き明かし、個と社会の進化を促すディープテック企業。日欧に拠点を構え、2022年創業当初から国際機関や海外研究機関と提携を図る。最先端の学術的知見を社会実装する独自の行動科学AIを開発し、誰もがウェルビーイングを追求できる社会を目指す。
オピニオン
多くのAIスタートアップが「予測」や「自動化」を謳う中で、Godotの挑戦は異彩を放っているともいえる。彼らが向き合うのは、“ヒトの行動原理”そのもの。つまり、なぜ人は損をするとわかっていても動かないのか、なぜ健康を意識しながらラーメンを食べてしまうのか。その深層にある“行動のメカニズム”を、AIで読み解こうというのだ。
このアプローチの面白さは、「データの因果」ではなく、「感情と選択の構造」に踏み込んでいること。アルゴリズムによる最適化ではなく、“人間の意思決定という混沌”を対象化する。これは単なる技術ではなく、哲学にも似た知的営みであり、人間の認知構造そのものにハックを仕掛ける行為だ。
「成果の可視化」と「境界線の曖昧さ」に課題はある。行動変容は定量化が難しく、“効果”を数値で語りづらい領域。また、心理誘導と倫理の線引きも問われる。過剰に介入すれば“操作”になりかねず、企業としての信頼性を保つには高度なバランス感覚が要る。
それでも彼らは「人の意思決定」というブラックボックスを社会の進化装置に変えようとしている。テクノロジーの最終目的が「効率」から「幸福」へとシフトする中で、“ウェルビーイングOSの開発者”こそが、次の時代の土台をつくる。
人間の行動そのものを「再設計」する。これは、社会制度や経済システムをいくらいじっても解けなかった“本質的な課題”への解法かもしれない。AIに「人間を理解させる」のではなく、「人間が自分自身を理解する」ためのAI。Godotの挑戦は、技術というより思想であり、未来の“意思決定インフラ”になる可能性がある。
オートフォーカスアイウェア「ViXion01」
概要
ViXionは、当社のパーパス「テクノロジーで人生の選択肢を拡げる」の実現に向け、次世代の視覚サポートデバイスの社会実装を目指すハードウェアスタートアップです。
主力製品であるオートフォーカスアイウェア「ViXion01」シリーズは、自動でピントを調節する革新的な技術を搭載し、眼の酷使や加齢にともなう視覚の課題解決をサポートするデバイスです。
2023年および2024年に実施したViXion01シリーズのクラウドファンディング累計支援額は5.5億円超を達成し、2024年のデジタルイノベーションの総合展「CEATEC2024」にて最高峰の総務大臣賞を受賞したほか、2024年グッドデザイン賞においてトップ100入選を果たしました。
オピニオン
ViXionは“人間の五感”という最もプリミティブな領域をテクノロジーで書き換えようとしている。加齢や眼精疲労によってピント調整が難しくなるという、誰もが避けられない身体的制約に対して、“装着するだけで自動的に焦点が合う”という体験を提供する。言うなれば、メガネの再発明であり、さらには“視覚のOS化”への第一歩でもある。
従来の老眼鏡や多焦点レンズが、静的な視力補正にとどまっていたのに対し、ViXion01はダイナミックに“視覚の文脈”を読み取って補正する。これは、「読む」「見る」「観察する」といった行為に、再び“能動性”を取り戻すことでもある。
主戦場は、単なる技術ではなく、“人間拡張”というマーケットだ。“失われていく能力を、テクノロジーで回復・拡張する”というニーズは、必ず世界中で増え続ける。超高齢社会・スマホ疲労・VDT症候群──目に関する課題は今後も右肩上がりに増える。そこに“眼のiOS”とも呼べるプロダクトを先手で出してきたのがViXionなのだ。
メガネを単なる「補助器具」から「知覚インターフェース」へと進化させる構想があるなら、ViXion01はその序章に過ぎない。今後はARとの融合、空間認識との連携、さらには視覚情報の“最適化”という領域にも広がる可能性を秘めている。人間の限界を超える道具として、ViXionは“見える”の先にある未来がある。
てんかん発作警告器「クアドリティクス」
概要
クアドリティクス株式会社は、「予測が難しいてんかん発作による事故や怪我をなくしたい」という志を共有する臨床医学・情報学・電子工学の研究者によって2012年に研究がスタートし、2018年に京都大学・熊本大学発のベンチャーとして設立されました。
当社は、てんかんという発作の予測が難しい疾患に対し、テクノロジーの力で“予測可能性”という新たな価値を提供し、患者さんの安心と安全を支えることを目指しています。私たちのビジョンは、「人類がてんかん発作を恐れず暮らせる未来を創造する」ことです。
オピニオン
てんかんは、「いつ発作が起きるかわからない」という“予測不可能性”が最大の恐怖だ。これは本人だけでなく、家族や学校、職場にまで心理的な不安を広げていく。
その「不確実性」に対して、「テクノロジーで予測可能にする」というアプローチを取ったのがクアドリティクス。これは単なる医療機器の開発に留まらず、“未来を先読みすること”で、人間の尊厳を守ろうとする挑戦でもある。
クアドリティクスは「発作を止める」のではなく、「発作の前兆を掴んで警告を出す」ことで、事故や怪我を防ぎ、“暮らしを変える”という思想に立脚している。つまり、病気そのものを治すのではなく、「不安定な日常を、少しでも安定に近づける」ことを目的にしている。まさに生活におけるリスクマネジメントであり、医療のパラダイムを「治療」から「予防・予測」へとシフトさせるものだ。
一方で、てんかん発作は個体差が大きく、機械学習モデルの精度向上には相当量のデータとパーソナライズドなアプローチが必要になる。汎用化と個別化のジレンマの中で、どれだけ精度と信頼性を確保できるかが今後の鍵だ。また、予測が外れた場合の心理的・社会的インパクト(いわゆる偽陽性・偽陰性問題)への対応も慎重に設計しなければならない。
「人間が不安とともに生きる時代」において、不安を“予測可能性”に変えるテクノロジーは、医療を超えて社会インフラになりうる。クアドリティクスはその最前線にいる。
間取りの自動生成「まどりLABO」
概要
まどりLABOでは注文住宅建築のプロセスを革新するマッチングプラットフォームを提供しています。
これから家を建てる施主の方は専門知識がなくても、土地情報と希望条件を入力するだけで、AIのサポートでわずか数分でその土地に最適な間取りを何十パターンも作成することができます。
さらに生成された間取りで気に入ったものがあれば、その間取りで複数の建築会社に一括で見積もりを依頼することが可能です。
このような革新的なプロセスにより、施主の方は自身の希望を間取りという形で伝えることができ、よりスムーズに家づくりを行うことができます。また建築会社の方にとっては、確度の高い施主の方の情報を効率良く獲得することができ、新たなビジネス機会の拡大に繋がります。
オピニオン
家を建てる──それは人生でもっとも高価な“意思決定”のひとつでありながら、その意思を可視化するプロセスは、いまだに非効率と属人性に支配されている。「間取り」という抽象と現実の中間にある“かたち”に対し、まどりLABOが与えたのは、UXとしてのスピードと選択肢の豊かさだ。
「数分で数十案」という時間軸の非線形化。従来、営業と施主が数週間かけてすり合わせていたプロセスが、瞬時にデータに置き換わる。その出力は汎用的なパターンではなく、土地情報という制約を踏まえた“文脈対応型”の提案ができる。
これは、単なる間取り自動生成ツールに留まらず、“施主と建築会社の間にある情報の非対称性”を解消するマッチングインフラとして機能する。例えば、無料ツールの提供は、建築会社にとっては「本気度が高く、ニーズが可視化されたリード」の獲得に繋がる。
一方で、現段階では“生成された間取りが本当に良いものか”をどう判断するかには課題がある。AIによるプランニングは、条件に忠実であるがゆえに、意外性や創造性という人間の感性を置き去りにするリスクを持つ。「プロの建築士によるブラッシュアップ」など、人間の“目利き”とAIの即応性をどう共存させるか。共存させなくとも、ユーザが納得するほどのクオリティが出力できるのか。
とはいえ、建築業界における情報の非対称性を、UXによって撃ち抜く。まどりLABOは「家を建てる」という問いをこれまで以上に“自分ごと”としての答えを与えるプラットフォームともいえる。生成AIの登場こそ、新たな生活デザイン産業の前兆になっていくだろう。
📖書評
クリエイティブ・マネジメント
『クリエイティブ・マネジメント』は、イノベーションについて書かれた本ではあるが、単なるチーム・マネジメントやクリエイティブの現場のための本ではない。「新しい社会の見え方をつくるための哲学書」であり、そして「問いを起点に再構築していく実践書」である。
この本の軸は、本文にも記載のある「新規事業とは、社会の再構築である」という本質にあると感じた。イノベーションは、プロダクトを作ることでも、サービスを運営することでもない。今ある社会の文脈に“疑問を投げかけ”、そこに新しい意味や選択肢を埋め込む営みこそが、創造の起点であり、マネジメントの役割だ。
ここにこれ以上にないほど共感した。ボクが書いた書籍「グランドデザイン大全」における「グランドデザイン」も、まさに「社会のOSを書き換える」ためにイノベーションに挑むべきということを軸に書いたからだ。だからこそ本書において「正解を探すな、問いを立てよ」「ルールを守るな、関係を再編集せよ」と繰り返し語られる言葉の一つひとつが、心のど真ん中に突き刺さってきた。
本書が描くクリエイティブ・マネジメントとは、“つくること(新規事業)”と“まもること(既存事業)”のはざまで揺れる人々に、「意味のつくりかた」を届ける営みだ。それは、計画や仕様ではなく、見えない関係性や語られていない感情を耕すことで、創造の余白を生み出す仕事である。
何かを“決める”ことではなく、何かが“芽吹く”ように場を整え、関係性を編集し、問いを持ち続けることこそが、マネージャーの真価である。指示を出すのではなく、状況を“整える”。評価を下すのではなく、関係性を“耕す”。進捗を管理するのではなく、信頼を“育む”。そんな“見えない仕事”こそが、マネジメントの仕事である。
クリエイティブの現場において、問題はいつも曖昧で、解は途中で変わり、誰もが不安を抱えている。その中で、マネージャーの役割とは「決める人」ではなく「問い続ける人」であり、そして「編集し続ける人」である。言葉にできないものを信じる力。未完成なものに伴走する覚悟。プロセスをともに設計する対話。そうした一つひとつのマネジメントの行為が、創造の余白をつくり、人と組織の“意味の総量”を増幅させていく。それはもはや、「人を動かす技術」ではなく「人と生きる思想」だ。
そして、これまでのルールや構造に対して、「このままでいいのか?」と静かに問い直す。そこにこそ、事業が生まれる余白がある。著者が刻む「“正しさ”ではなく“らしさ”を育む」「個ではなく関係を見る」「問いかけで場の空気を変える」など、どれも実務に根差した強い言葉たち。それらが机上の理想論ではなく、「具体的な問いと行動」として提示してくれている。
この本は、イノベーションに挑む人たちにとっての、特に破壊的イノベーションに挑む全ての人人たちにとっての「思想書」として、一番最初に読むべきといえる。“人とともに、まだ見ぬ世界をつくる”ための、静かで力強い道しるべとなる。読み終えたとき、頭の中に残るのはただの“納得感”ではない。実際の自分のプロジェクトで試してみたいと思えるはずだ。
クリエイティブ・マネジメント
2025/2 発刊
柴田 雄一郎 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4866803134
📺動画コンテンツ評
佐藤航陽の宇宙会議
『佐藤航陽の宇宙会議』は、経営者の一人語りでも、ただの対談番組でもなく、思考の次元を一段引き上げる“知的トリップ”だ。
佐藤航陽もそうだが、対談する専門家たちもみな、世界を“構造”で語れる異能者であり、かつ各分野の“思考の越境者”だ。「宇宙会議」とありながら、「時間とは何か」「進化とは何か」「死とは何か」「社会とは何か」──今ここをどう生きるかという本質的問いで、ボクらの「当たり前」を根底から揺さぶってくる。
思考を極限まで拡張した人たちだからこそ、逆説的に“地に足がついた議論”になっている。例えば、「テクノロジーと生物進化」というテーマにおいても、最終的には「人間の幸福とはなにか」という問いに帰着していく。ロジックの先にあるのは、やはり「どう生きるか」なのだ。
この番組は、いわば次の時代をつくる人間に必要な“思考の作法”が詰まっているといえる。新規事業やイノベーションに関わる人間にとって必要なのは、技術でも戦略でもない。“次の世界をどう解像度高く描けるか”という思想だ。そして、それを“言葉”として他者と共有できる力だ。世界の構造をどう見るか。概念をどう定義し直すか。常識をどう疑うか。──そのすべてを、この番組から学ぶことができるといっても過言ではないかもしれない。
『佐藤航陽の宇宙会議』は、単なる知識を仕入れる番組ではなく、未来を変えたいと願うすべての人に贈る、知のリチュアル(儀式)ともいえる。“思想の格闘技場”であり、“哲学のラップバトル”であり、“世界観の編集室”だ。ぜひこの番組を通じて感じてほしい。「思考とは、ここまで自由で、ここまで危険で、ここまで楽しいものだったのか」と。
それを知ったとき、きっとイノベーターたちの中の“宇宙”も動き出す。未来をつくるのは、そういう思考をやめない人間たちだから。
佐藤航陽の宇宙会議
https://www.youtube.com/@ka2aki86
🎞️エンタメレビュー
過去のレビュー▶︎Filmarks
地面師たち
今さらながらのNetflix「地面師たち」。しかし今さながらでももちろん楽しめるドラマだった。
「なぜ、彼らはあれほどまでに大胆なことができたのか」という問いを通じて、社会構造そのものを浮き彫りにしていく、異常なほど精密な“リアル・サスペンス”。
“起業”と“詐欺”は、紙一重だ。だからこそ、イノベーターや起業家たちが見るべき犯罪ドキュメンタリーなのかもしれない。
土地という“動かぬ資産”を、人の“なりすまし”だけで動かす。詐欺とは、ある意味、徹底的な編集とプロデュースだ。演者(なりすまし)、脚本(偽造書類)、舞台(事務所)、演出(信頼感)。それらを組み合わせて、リアリティという名の虚構を立ち上げる。
イノベーションとして新規事業を生み出すときには、ボクらは“この世にまだ存在しない価値”を言葉にし、チームを組み、投資家や上司を納得させ、顧客の頭の中に“架空の未来”を信じさせる。そのプロセスと、地面師たちの所作は、どこか似ているのだ。
もちろん、詐欺は悪だ。倫理的に許されるものではない。しかし、彼らの“編集力”と“構造理解力”があまりにも鋭く、そして見事だったことは否定できない。
また、この社会は「“そこ”を突かれると崩れる」という構造上の脆さを常に内包されている。それを視聴しているボクらにまざまざと突きつけた。社会を支えている“前提”が、たった数人の“設計者”によって壊される。いや、“壊す”というより“活用”されている。
「信用」は、目に見えないが、最大の資産だ。そして「目に見えないもの」は、最も編集しやすい。このドキュメンタリーは、情報大爆発の時代において“誰が社会をつくっているのか”を改めて突きつけてくる。法律か?国家か?金融機関か?──違う。「構造を理解し、物語を設計した者」こそが世界をつくっているのだ。
そんな当たり前すぎて見えなかった真実を、地面師たちは証明してしまった。これは犯罪の物語ではないのだ。“構造を設計する力”がいかに社会を動かすかという物語だったのだ。
それを理解しなければならない。特にイノベーターこそが。観終わった後に、思わず背筋が伸び、次の問いが立ち上がった。彼らがやったことを「“正しい力”で再現できるか?」。この異常さを自らに転用できるかどうかこそ、イノベーターはしっかりと見据えなければならない。
地面師たち
公開日:2024年07月25日
製作国:日本
全7話
https://filmarks.com/dramas/14823/20162/reviews/18301468
🍽️グルメ情報
ベトナム料理「ボンちゃん」
小田原の商店街にあるベトナム料理。田舎の少し寂れたビルの、怪しい雰囲気の細い路地を入った奥の階段を上がった2階にあるのが「ボンちゃん」。
ちょっと入りにくさも感じる入口だけど、一歩足を踏み入れた瞬間に感じる空気の違いがたまらなくいい。甘くて濃くて、でもどこか涼しげな香草の匂い。日本の片田舎に間違いなく、ベトナムがある。
何を頼んでも、媚びていないベトナム本場の味。定番のフォーから変わり種のカエルまで、どれを頼んでも変なローカライズをしていないベトナムの味が美味しい。異国の味ながら、どこかの誰かの"母の味"を感じさせる懐かしさや優しさがある。そして、アジアンな薄口のビールによくあう。
「うまい店」は探せばいくらでもある。でも“心が動く店”にはそうそう出会えない。「ボンちゃん」はまさにそれだった。本場の味の美味しさにプラスして、“誰かの人生”と“遠い国の風”が皿の上に乗っている。こういう体験こそが「食体験」だ。食を通じて、文化を、異国の家庭のぬくもりを感じることができる。
小田原に来たら、海鮮、かまぼこが有名で、小田原おでんや最近では小田原タンメンもある。しかし一食ぐらいは、小田原でベトナムに小旅行してみるのはいかがだろうか。
ボンちゃん
〒250-0011 神奈川県小田原市栄町2-7-34 錦月ビル 2F
℡ 0465-55-8337
🕙 11:00 - 0:00(土のみ 11:00 - 02:00)
https://tabelog.com/kanagawa/A1409/A140901/14083502/
🤖AIと壁打ちリサーチしてみた
過去のリサーチ▶︎Research Center
「AI 2027」の論文をもとに「生成AIが普及した未来」についてにAIと壁打ちリサーチしてみた
https://research-center.hatenablog.com/entry/2025/06/04/050838
💡未来妄想新聞
▼過去発刊号
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脳データ義務化法、成立
全住民の大脳情報をクラウドに常時保存する「記憶バックアップ義務法」が可決。国費負担で実装し、認知症ゼロ社会を2045年までに実現すると政府が宣言した。
国会は十四日未明、超党派提出の「国民大脳保全法案」を賛成三百二十六、反対九十四で可決した。法案は二〇八〇年度から五歳以上の全住民に対し、年二回のシナプススキャンとリアルタイム差分更新を義務づける。取得したニューロン接続データは量子暗号で分割し、国営メモリクラウド「NeuroVault」に保管される仕組みだ。政府は総事業費九・六兆円を全額国費で賄う方針を示し、所得税増ではなくカーボン税の余剰配分で捻出すると説明している。
背景には急速な高齢化と医療費の爆発がある。厚労省統計では二〇七五年時点で認知症患者は国内二千四百万人に達し、医療・介護コストはGDPの一六%を占めた。脳データの定期バックアップとナノチップ再書き込み治療を組み合わせれば、発症前に記憶の欠落を補完できるとの試算が出たことで、抜本策として法制化が急浮上した。
賛成派は「人間のソフトウェアを守る公共事業」と歓迎する。新設される国家脳情報庁の初代長官に就任予定の星野杏樹氏は「二〇四五年に認知症ゼロを達成すれば、年間二十兆円の社会コストを圧縮できる」と胸を張る。一方、日本弁護士連合会は「本人同意が形骸化し、デジタルアイデンティティの所有権が不明確」として憲法訴訟を視野に入れると表明。ハッカー団体“ZeroMind”も「国家が精神のルートディレクトリを掌握する」として抗議サイバー攻撃を予告した。
政府はプライバシー保護措置として、データ復元には本人と第三者機関の二重鍵が必要な「ブレインマルチシグ」方式を導入すると説明。万一の漏洩時も一人分の鍵からは五%以下の記憶しか再構築できないと主張するが、技術的裏付けの詳細は未公表だ。
海外では既に韓国とノルウェーが任意登録制度を開始し、三年で認知症予備軍が二七%減少したとの報告がある。EUは「データ主権」を理由に域内クラウド保存を条件とするなど各国対応は割れており、日本の全面義務化は国際社会の議論に火をつけそうだ。
自らの脳を〈公共財〉として差し出す覚悟を、社会は受け入れられるのか。意識のデジタル複製と尊厳の境界線が、法の名の下に書き換えられようとしている。
📜Pinky’s Slide:ピックアップ
イノベーションは”顧客課題”から始めるのではなく、”顧客の理想の未来像”から始める
問題と課題の違いを曖昧な認識のままイノベーションに挑むと、矮小なアイデアに終着し、執着する羽目になる。
🗣️心に響いた名言
人生には常に複数の選択肢がある。イノベーションに挑む道なれば、その選択肢は無限に広がっていく。
その全ての選択肢を取ることはできない。常に1つの選択肢を「決断」して前に進むしかない。なんら論理的根拠やエヴィデンスがない中でも、勇気を持って決断して前へ前へと進むことこそがアントレプレナーシップだ。
だからこそ、選んだ道を「正解にする」という姿勢を持って行動し続けることが必要だし、選ばなかった道も捨て去るのではなくまた別の可能性として棚に並べておくことも必要だ。
その姿勢を持つことで、不確実性の高い現代において、どんな変化が起きても俊敏さを保って進み続けられるし、その変化そのものを創出する側に回ることができる。
🩺ChatGPTに聞いた先週のピンキー
ビジョンを言語化する構造的編集者
新規事業支援のブログやビジネス書の執筆において、思想・構造・情熱を一体化させる言葉選びが際立っています。単なる説明ではなく、「読者の火を灯す言葉」へのこだわりが明確に見られました。
感情と構造を往復するストーリーテラー
CM・ドラマ・音楽・レビューなど多様な媒体に対して、“揺さぶられた心の動き”を起点に構造的なメッセージとして表現する志向が見られます。感情→構造→再編集、という思考ループが明瞭です。
他者の認識を揺さぶる問いの創造者
ツイートやコラム、名言の再解釈では、「何を問い直せば、人の認識が変わるか?」を主軸に置いています。答えを与えるのではなく、世界の見え方を再構築する問いづくりに関心があります。
社会システムを変えようとする批評的実践者
ビジネスコンテストやスタートアップのレビューでは、事業そのものの構造だけでなく、それがどんな文化・価値観・社会構造に影響を与えるかという“批評的視点”が濃く表れていました。
「魂のこもった言葉」への絶対的執着者
リズム、余白、断定、問い、詩性、どの要素においても「思想のない言葉」を拒み、「本当に伝えたいものは何か」に何度でも立ち返ろうとする姿勢が徹底されています。文体は哲学であり戦略です。
ChatGPTに投げたプロンプト
この1週間のChatGPTの使い方から、私の志向性や関心をまとめてください。
📅セミナースケジュール
“変革はいつも現場から始まる”
──ゼロ体制・ゼロ予算から挑んだ、
建設業発イノベーションの道のり
IntraStar / オフライン限定 / 参加費無料
2025年06月10日(火)19:00-20:30
https://www.curations.jp/article/FNoNNx2S
社内外から協力を得る「巻き込み力」の鍛え方
〜このプロジェクト、もう止められない!〜
Curations / オンライン配信 / 参加費無料
2025年06月12日(木)11:00-12:00
https://www.curations.jp/article/z1dLGaXB
【新規事業のいろは】
なぜイノベーションが必要なのか
〜両利きの経営概論〜
Curations / オンライン配信 / 参加費無料
2025年06月19日(木)11:00-12:00
https://www.curations.jp/article/VfF43vFJ
【新規事業のいろは】
新規事業のプロジェクト・デザイン
〜活動を始める前に準備すべきこと
Curations / オンライン配信 / 参加費無料
2025年06月26日(木)11:00-12:00
https://www.curations.jp/article/dQCBJxPs
📨Pinky’s Message:更新情報
💉新規事業Q&Aコラム:更新情報
過去のQ&A▶︎新規事業一問一答 - 新規事業サプリ
質問はコチラ▶︎マシュマロからお気軽に!
イニシャルコストとランニングコストの関係性は?
Q. 新規事業の立ち上げを考える中で、イニシャルコストとランニングコスト、そして売上の関係性がよく掴めておらず、財務的な継続性が見通せません。何から、どう設計していけば良いでしょうか?
✔︎ 事業継続のカギは「損益構造の読み解き」にある
✔︎ 売上の“増え方”と、コストの“増え方”の関係を設計せよ
✔︎ イニシャル vs ランニングのバランスで“耐久力”が決まる
https://incubator.report/2025/05/29/what-is-the-relationship-between-initial-and-running-costs/
なぜ企業では新規事業が生まれづらいのか?
Q. 新規事業の重要性が叫ばれ続けているのに、
なぜ多くの企業では実際に新規事業が
立ち上がらないのでしょうか?
経営層も現場も「やるべき」と理解しているはずなのに、
動き出せない、もしくは動いても芽が出ない。
その背景には、いったいどんな構造的な問題が
潜んでいるのでしょうか?
✔︎ 新規事業が生まれないのは「能力」ではなく「構造」の問題
✔︎ 四半期主義・HOW型人材・成功体験の呪縛が三大障壁
✔︎ 評価制度・前例主義・意思決定距離も、挑戦の芽を摘んでいる
https://incubator.report/2025/05/31/why-is-it-so-hard-to-create-new-businesses-in-companies/
事業を生み出せる組織は、何から変えているのか?
Q. 新規事業を生み出すには
「組織のリノベーションが不可欠」と聞きます。
事業を本気で生み出す組織になるために、
企業は何から取り組むべきでしょうか?
✔︎ 成熟企業に必要なのは「個人改革」ではなく「組織の土壌改良」
✔︎ 第一歩は「挑戦者を生み出す人材開発」と「支える側の設計」
✔︎ 仕組み・風土・経営の“思想”まで変えなければ、事業は生まれない
https://incubator.report/2025/06/01/what-do-organizations-that-can-generate-business-change-from/
なぜ「N=1」にフォーカスしなければならないのか?
Q. 顧客の解像度を上げることが重要だとわかってはいても、「N=1」にこだわる理由がよくわかりません。統計データや多数の意見ではダメなのでしょうか?
✔︎ N=1の深掘りからしか、本当のインサイトは生まれない
✔︎ 事業はN=1を救うところからしか始まらない
✔︎ N=1の物語だけが、他者の心を動かす力を持っている
https://incubator.report/2025/06/03/why-should-i-focus-on-n1/
なぜ「小さく始めて大きく育てる」のが鉄則なのか?
Q. 「新規事業は小さく始めて大きく育てろ」とよく聞きます。大胆に始めたほうがインパクトも大きいのでは?と思ってしまうのですが、小さく始めることにはどんな意味があるのでしょうか?
✔︎ 初期は信頼もリソースも乏しい。小さな勝ちが次の予算を呼び込む
✔︎ 価値は「尖らせる」からこそ届く。「そこそこ便利」は誰にも刺さらない
✔︎ 正解が見えない中で、最速で学ぶための仕組みとして“スモールスタート”は必須
https://incubator.report/2025/06/04/why-is-it-an-ironclad-rule-to-start-small-and-grow-big-2/
勝とうとするほど失敗する──組織で生き残る新規事業の鉄則は?
Q. 自分では新規事業のアイデアに確信がありますが、外部メンターや上司、役員からの理解が得られません。皆の意見を取り入れなければならないのでしょうか?押し通すべきか、調整すべきか悩んでいます。
✔︎ 自信があるのに、理解されない──この孤独は誰にでもある
✔︎ 強く主張するほど、組織では味方を失いやすい構造がある
✔︎ 押し通すより、「負けない構造」をつくる方が前に進める
新規事業は失敗しても、キャリアに意味がある?
Q. 成功確率が低い中で
「このまま続けてキャリアは大丈夫か」と
不安に思う担当者も少なくありません。
新規事業に挑戦し続けることの価値や、
経験がどのように活きるのか教えてください。
✔︎ 新規事業経験者は、組織の未来を通訳する存在になれる
✔︎ 経営人材に必要な“意思決定の筋力”が鍛えられる
✔︎ 失敗経験が語れる人こそ、転職市場で最も価値ある人材になる
https://incubator.report/2025/06/08/if-i-fail-in-my-new-business-what-does-it-mean-for-my-career/
📝マインドセットコラム:更新情報
過去のコラム▶︎note
人望は一日にして成らず
✔︎ 言葉・表情・交わり方を意識することが人間関係を拓く
✔︎ 専門性に閉じこもらず、広く社会と関わる姿勢が信頼を育てる
✔︎ 取り繕わず、真摯であることが結局いちばん強い
https://note.com/hiroyukiarai/n/nef90da5eeb8b
時間軸を伸ばせば、人生の選択は変わる
✔︎ 目先の判断に迷ったら、10年後の自分で考えてみる
✔︎ 短期の成果より、長期の可能性を信じることが未来をつくる
✔︎ 大きな果実を育てるには、覚悟と時間がいる
https://note.com/hiroyukiarai/n/nefbe18eb2b72
📹YouTube更新情報
◆最新更新
【新規事業のいろは】新規事業創出のプロセスを理解する
◆グランドデザイン大全 解説
#01:グランドデザインとは?
◆新規事業Q&A
◆セミナー【新規事業のいろはシリーズ】
◆セミナー【新規事業Tips】
📖「企業内新規事業の作り方」に関する入門書
超・実践! 事業を創出・構築・加速させる
グランドデザイン大全
超・実践! 事業を創出・構築・加速させる グランドデザイン大全
2024/10 発刊
Hiroyuki "Pinky" Arai / 荒井 宏之 (著)
https://www.amazon.co.jp/dp/4781622771